きりんのきもち

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【フィンランド史跡・美術館見学③】タンペレ教会(Tampere Cathedral)

に引き続き、タンペレ教会(Tampere Cathedral)について紹介する。今回は内部の、特にHugo Simbergによって手掛けられた部分を見ていく。

 

 

蛇 

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Simbergがメインのヴォールト天井に描いた蛇は、1907年教会が完成し人々の目に触れた際に物議を醸した。蛇は教会美術において典型的なモチーフではないーーふつう、悪や罪の象徴と考えられている。これに対し、最終的に教会は委員会まで設置してこの問題を取り扱ったものの、大半の会員はこの蛇を良しとした。40年後の司教訪問の際に再び議題に上るなどしつつも、結局今日に至るまでこの蛇は無事天井に残されている。

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蛇は口にはリンゴを咥え、皮の翼を広げている。翼は背景の色に紛れて見にくいが、ドラゴンの翼のような皮膜状の羽が三対あるようだ。

とはいえ、そもそも何故Simbergは悪や罪を象徴する蛇を教会に描いたのだろうか?一説では彼は人々に、「例え教会であっても内部に罪を孕むことがある」ということを思い起させようとしたのだという。また、この蛇から教会を守るかのようにその周囲には無数の天使の羽が描かれているが、蛇はそれらの羽よりもずっと鮮明に描かれている。このことは人生におけるたった一つの罪業が、その一生の他のあらゆる善行をも無に帰してしまうかもしれない現実に対する警句だとも考えられている。

 

命の花輪

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Simbergは蛇を仕上げたのちに、教会の壁を囲むフレスコ画に取り掛かった。この二階ギャラリーの縁に沿って描かれた棘付きの花飾りは、愛のバラと怒りの棘の両方がついており、イエスの門弟たちを表す12人の裸の少年たちによって携えられている。バラや棘は生涯における幸福や困難を示し、「人生」それ自体の象徴となっている。同時にそれを担ぐ少年たちも、多様な人々を象徴するものとなっているーーある者は軽々と、ある者はその重みに苦慮しつつ花輪を運ぶ。そしてこの絵画の両端には荒涼とした土地が描かれているが、少年たちも人生が常に死に向かっていくことを暗示するかのように、そちらに向かって歩いていくのである。

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見にくいが、左の火の灯った木の根元に巻き付く細紐のようなものが蛇だろう

この荒涼とした土地が死を意味することは想像に難くないが、描かれた個々の詳細は何であろうか?もちろん、画家の描くすべての物事について、明快なモチーフを言い当てることは難しい。だが、可能性の高い推論を述べることはできるだろう;

例えば木立の間を死の土地へと飛んで行く一匹の鳥はカササギであるが、フィンランドの民間伝承においてはカササギは”人に死の運命を告げた”とされている*1。このカササギがその役回りに従って、少年たちの先頭で彼らを死へと導いていくのだ。

また端に描かれた黒い木に灯る11個の炎は、聖なる魂を表しているという。イエスの弟子を表す12人の少年に対して一つ欠けた炎ーーつまり、弟子の一人はユダである。そのことを裏付けるかのように、11の聖なる魂を宿す木の根元には、一匹の小さな蛇がまとわりついている。

ところでこの記事では教会内の全体像がわかりにくかったかもしれないが、このSimbergの絵は前回記事で見たEnckellの「復活」と組み合わさることによって完成されている。壁面を覆う「命」=「一生」はやがて両端の荒れ果てた「死」によって絶たれるーーしかし、内陣へと至るとき、そこには「復活」があるのだ。

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なお、この裸の少年たちも蛇と同様議論の的となっている。教会に裸像は相応しくないとの理由からである。しかし同時に、「神の前ではその罪は裸のごとく晒され、自然のままにあるべし」という真理を表すものとしても受け取れるのだ、とも考えられた。

 

Simbergの絵とステンドグラスがまだ残っているのだが、ここまでで結構場所をとってしまったのでまた次回に回すこととする。もっとすんなり終わると思ってたのに意外と長いな…。なんとなく記事を1500文字くらいがいいかなと思いつつ1000文字~2000文字で切ろうみたいな気持ちが出ている。その方が薄すぎず厚すぎず読みやすかろうと思っているのだが。